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春に想う 9話 - 22歳の春(3)

Gスポットに勤め始めてからは、今までの孤独は徐々に薄れていった。
この店に出勤する時間は、毎日、夕方5時半。
店を開けてから、8時間、午前2時まで働く、夜の仕事だ。
週6日で勤務していたが、これだけでは満足できなかった。
むしろ、昼間自分を遊ばせておくことに我慢できなかった。

店に出る前に働けるバイトを探した。
時間に制約があるので、いろいろと考えあぐねた。
まず最初に訪れたのが、教材販売のバイトだ。
当時はインターネットはおろか、携帯電話さえ普及してなかった時代なので、
担当者から学校のPTA名簿を渡されて、順々に昼間家にいるお母さんを
ターゲットに電話をしまくるという仕事だ。
2週間ほど続けたが、嫌がる人に無理やり高い教材を売りつけようとするのは、
俺の趣味に合わなかったからやめた。

塾講師や家庭教師は手っ取り早かったが、いかんせん、
バカな子供相手に必死になる塾の講師ほどむなしいものは無いと、俺は信じていたので、
積極的にはやろうとはしなかった。

俺のこの努力も、最終的には飲食店に向いていった。
俺は、寺町にあるとある喫茶店をサブのバイトに選んだ。
四条通を寺町に上がってすぐのところにあるファミレスと喫茶店を兼ねたTブレイクという店だ。
ここだと、夜の店まで、歩いて10分でいけるという立地的条件も最高だ。
朝の10時に出勤して夕方の5時までの7時間で契約した。

この日から、俺は、毎日、14時間の肉体労働だ。
朝から晩まで、人が食飲み食いするのを世話して終わる。
大学に通うエリートからみれば、反吐が出るような最低の生活スタイルだろう。

自発的な興味から本を開くことがほとんどまれで、
よりよい就職だけを求めて、単位やゼミの取得に追われることを何の抵抗もなく
受け入れられる人の集まりが大学だと思っていた。
大学3年の冬になれば、勉強ほったらかしで、
面接の仕方を解説した本ばかりを真剣に読みふける学生が殆どだった。
それが、当時年功序列の社会システムに組み込まれ、
生涯を通じて、無難な生活を送るもっとも安易で最善の選択肢だったからだ。
だから、誰も彼も異口同音にありきたりな社会と常識を詠うが、
もう少し自分の研究や、学問的な自分の私見を
自由に語れる人がいてもいいと思った。

多くの人が大学は就職までの遊ぶところだと思っている、
というのが、俺の短い大学生活で得た限りなく真実に近い現実と、信じていた。
俺は、大学のことを『大人の幼稚園』だと、ずっと言っていたのを覚えている。
当時は、今の職業(研究)に自分がつくことを全く想像できなかったので、
俺は、自ら自分で勉強することを放棄したのだ。

俺は、大学という園児が遊ぶ庭でのほほんと過ごすよりも、
実際社会の底辺で、必死に生きる人間の姿の方が見ていてより楽しいと想う、人間だった。

それが俺を大学からドロップアウトさせた動機だったのかしもれない。

夜働き始めると、楽しかった。
俺とY田は新米だったので、次の新米が来るまで、皿洗いと厨房での調理を命じられた。
オーダーを取るのは、T飼、カクテルを作るミキサーは、N島。
店長のO崎はなんでもやっていた。

この店で使う食器、それにデリケートな形をしたファンシーなグラスを洗うには、
普通の食器を洗うよりは2倍は手間がかかった。
まず、洗剤で丁寧に洗って、それから、お湯を張ったシンクにしばらくつける。
このときに、注意しないと、お湯の中にあるグラスに当たってよく割れる。
お湯につけると、乾くのが早いし、汚れがきれいに落ちているかどうかが、良くわかるのだ。
きれいに洗われたグラスでは、水は流れるようにグラスの表面を
滑り落ちて、一粒の水滴も残らない。

厨房に入っていると、いろんなフードメニューを作らないといけない。
フライドポテトなど、冷凍物を上げるだけならた易いが、
イカのバター炒めや、ホタテの貝柱、アスパラとベーコン、などのメニューになると、
厨房に隅に備えられた大きな鉄板で調理を強いられた。
鉄板はカウンターから見えるところにあったので、
唯一この店のウィークポイントだと、皆が言っていた。
一日ここにいると、油にまみれた。

Y田は学生なので、週に数回しか出勤しない。
殆ど毎日店に出ていた俺が、すべて雑用を管理させられるようになった。
Y田は、カウンターに座ったかわいい女の子を見ると、仕事をしなくなった。
こいつほど、しゃべる人間は今までに見たことがなかった。
あることないこと、殆どすべて嘘ばかりで、針小棒大に話す。
俺も負けずに、彼と一緒になってしゃべり始めるが、口の軽さが断然違う。

彼の言うことは、嘘だとわかっていても、女の子の気持ちをしっかり捉えていて、
しかも、滑らかで心地よい響きがある。
そして、一つ一つの言葉に優しさを巧みに組み込む事を決して忘れないのだ。
狙った獲物を話さない肉食動物のようだったが、
次の日に、その客から『Y田さんはいらっしゃいますか?』と、
必ず電話がかかってくるのだ。
俺は、それを心のそこからうらやましいと想ったが、
なかなか、見よう見まねで、一朝一夕に出来る代物ではなかった。

俺は、こいつの性格はあまり好きではなかったが、
俺が明らかに俺とは違うこと知っていた。

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